「科学映像館の設立へ」

 報道カメラマンであった小林米作氏は、戦後、科学映画への取り組みを始めた。そして
1958年、小林氏が東京シネマ代表岡田桑三氏と制作した一編の科学映画「ミクロの世界」は世界を驚かせた。 この映画は結核菌の動態を微速度顕微鏡撮影の技術を用いて世界で始めてとらえた映像「ミクロの世界」である。次いで彼らは鶏の胚をガラス容器内で長期間培養、撮影し生命の誕生に迫った「生命誕生」などを制作。これらの映画はパドヴァ大学科学教育映画大会でグランプリの受賞、さらに国内外の映画祭で高く評価された。

  しかもこれの映画が素晴らしいのは、生の素材を克明に捕らえるだけでなく、色彩、構図など映像表現の美しさ。またかれらの科学映画は大学、研究者の協力と指導のもと制作され、学問の世界でも高く評価された。制作者、研究者、と企業の三位一体で制作されたものである。また黛 敏郎、一柳 慧氏などに作曲を依頼、映像と音楽の総合を図った映像芸術である。しかし、現在、これらの映画の存在すら知っている人も少なく、企画した会社やプロダクションの倉庫に寝たままとなっている。

 私達は3年前から骨の健康づくり委員会などで作品を配信してきた。毎日100人以上の方々が、これらの映画をみられている。昨年夏、この配信が朝日新聞夕刊、論説委員の窓の欄で取り上げられた。論説委員の辻さんは「理科離れが問題になっている今日、驚きに満ちたこれらの作品を使わぬ手はない」と。その翌日、 なんと
1000人を超える人が、私達が配信している映像を見てくれることとなった。これらの映画が、秘蔵化している証であろう。しかもこれらの映画はアナログ時代の作品であり、フィルムの劣化も激しく、その管理は大変厳しい。ある大手製薬会社では映画の破棄も考えているようである。本当にもったいない。

 一方、ITの技術の進歩はすばらしく、映像を高品質の状態でデジタル化し、しかも長期間保存することも可能になってきた。そこで私達はこれらの作品を35mmネガフィルムからハイビジョンでデジタル(HD)化し、保存管理すること。さらにこれらの映像を教育、研究現場などで活用できるシステムを考え、今回、科学映像館の設立を企画した。映画制作者、プロダクション、IT関係者、研究者など各界の方々のご意見、ご指導の下に近々、科学映像館から、新盤の映像を配信できる段階となった。

 現在考慮中の科学映像館の事業内容
1. 映像を35mmネガフィルムからハイビジョンによるデジタル化〔HD化〕する。
2. HDの保存管理システムを確立
3. ホームページにより科学映像に関する情報の発信と映像の配信
4. HDの教育現場などへの提供と協力会員への配布

 なお映像館の企画運営は科学映像館を支える会で行う予定。映像は代表作を選定し、東京光音の絶大なるご協力でHD化に取り掛かっている。またホームページでは科学映画の歴史的背景、小林米作の映像、製作者の舞台裏、光と影、配信作品の紹介、映画評などを盛り込みたいと考えている(製作中)。
今後、皆様の科学映像館へのご意見、ご指導をいただければ幸いである。