耳よりな話トピック
健康づくりを骨から始めましょう
執筆予定者バックナンバー

代償はイヤだ 虻川 東嗣
野菜、食べていますか? 横塚(旧姓田川) 由美

代償はイヤだ
マサチューセッツ総合病院口腔外科
虻川 東嗣

あぶかわ はるつぎ

マサチューセッツ総合病院口腔外科所属し、ハーバード大学歯学部助手を務められる。
専門はティッシュエンジニアリングによる骨の再建。
国や地域差のない医療技術の提供に寄与することが夢とのこと。

 病気でなくなった骨を元どおりにすることができるのでしょうか?

答えはイエスです。

 しかし、現在のところ、それには残念ながら代償がつきます。骨がなくなった部分を、他の健康な部分の骨を削って移植して補うのです。決して危険な手術ではありませんが、健康な骨を削るわけですから、後遺症が残らないとは言えません。これを専門的に遊離骨移植といいます。約15年前にこの問題点に気付き、これを解決しようと医師や研究者がスタートした新しい治療の試みを組織工学(ティッシュエンジニアリング)といいます。少数の幹細胞と生体材料を使って、失われた臓器を、代償を払うことなく作ろうという試みです。

 では具体的にどう治療が行われるのかご紹介します。幹細胞は我々の骨髄中に比較的多く存在し、小範囲の部分麻酔で、腰骨から注射器で取り出す事が可能です。この幹細胞は利口な細胞で、“骨を作る細胞になりなさい”と指示すると骨形成細胞になり、また、“軟骨を作る細胞になりなさい”と指示すると軟骨形成細胞に変化します。また、“子供をたくさん作りなさい”と指示すると、素直にその数を増やします。

 こうして、骨形成細胞に変化し、数を増やした幹細胞に、住む家を作るための骨組みが与えられます。この骨組みが生体材料ということになります。この骨組みを手に入れた骨形成細胞は、その骨組みに住み込み、適切な土地に移された後(移植)、与えられた仕事をセッセとするようになります。例えて言うなら、壁(骨基質)を作り、浴槽をお風呂に埋め込み(細胞を基質に埋め込む)、魅力的な置き物を飾ってお友達(血管形成細胞)も招けるようにします。ちょうど家全体が完成したころ、骨組みはすでに見えなくなってしまいます(体に吸収)。こうして健康な骨を削ることなく、腰骨から少量の骨髄を抜くだけで目的が達せられるということになります。

 ここまでを読むと、「なんと便利な治療法だろう」とか「この治療法はもう病院で頻繁に使われているのか?」などという言葉が聞こえてきそうですが、残念ながら現在のところ、安全に患者さんに使われるには至っておりません。この“安全に”というところが大切です。

 問題点は2つあり、
1.いったん、幹細胞から骨形成細胞になった細胞が、また幹細胞に逆戻りしてしまうことがある。
.適当な土地に移した時に、新しい環境に馴染めずに、細胞が元気を無くしてしまう細胞がいる。

 この2つの問題が解決された時、この治療法を自信を持って患者さんにおすすめできると我々は信じています。それにしても、問題点1、2、ともに、人々の実社会にも十分起こりうることで、個々の細胞も、一個人も似たようなところで悩んでいるということが興味深いところではないでしょうか。このティッシュエンジニアリングという技術は将来的に、今回述べた骨再建にだけではなく、骨粗鬆症はもちろん、先天異常など様々な分野への応用が期待されています。

野菜、食べていますか?
明海大学歯学部口腔微生物学講座
横塚(旧姓田川) 由美

よこつか(旧姓たがわ)ゆみ

香川県小豆島出身。平成6年香川医科大学卒業。内科・神経内科の研修を行った後、香川医科大学大学院博士課程へ進学し、東京医科歯科大学分子医化学教室、獨協医科大学神経内科へ研究留学。学術振興会特別研究員時代を経て、Johns Hopkins大学神経内科・神経科学へ留学。帰国後、明海大学歯学部口腔微生物学講座助手。一貫して、免疫性神経疾患の研究に取り組んできた。現在の研究テーマは、Guillain-Barr_症候群の発症機序における粘膜免疫の関り。趣味は、料理、ジム通い、ドライブなど。最近の著書は、「アメリカ・カナダ医学留学へのパスポート vol.2」(分担執筆、はる書房)。

 最近、学生さんが男女を問わずよく便秘を訴え、2次的に切れ痔になる子が多いのには驚かされます。「野菜や果物を食べていますか?」と尋ねると、「果物は剥くのが面倒くさい」とか、「野菜はどうやって食べたらよいのかわからない」と言うのです。その食事内容はといえば、穀類と肉に大きく偏ったものでした。食物繊維が少なく、炭水化物と動物性脂肪が非常に多いことがわかります。これじゃ便秘にもなるでしょう。

  殆ど全ての生活習慣病にカルシウム不足が関係するといわれていますが、肉類にはナトリウムやリンが豊富に含まれるため、カルシウムの排泄を促してしまいます。男子学生さんのひとりに、健康診断の血液検査の内容について相談され、データを見せてもらうと・・・完璧な高コレステロール血症でした。「今のままだと、成人病まっしぐらですよ。これから必ず毎日野菜を摂りなさい。野菜を食べられない時は、100%の野菜ジュースを飲みなさい。毎日一定の時間歩いたり、体操したりしてみてください。そうすれば、便秘も解消できて体調がよくなるはずです。」 とアドバイスしました。さらに気になるのは、スナック菓子と清涼飲料水を間食として摂り、夜間に多量の飲酒をしている子が多いことです。多量のスナック菓子の摂取は、リンの取りすぎによるカルシウム不足を来たします。清涼飲料水すなわち砂糖の多量摂取は体内環境を酸性に傾けますが、体は恒常性を保とうとしてカルシウムなどのミネラルを使って、アルカリ性に戻そうとします。(自分にも覚えがありますが・・・)学生時代はお酒の適量がまだ分からず、深酒をしてしまうことがあります。お酒は分解にビタミンやミネラルを必要とするとともに、血管内脱水を促します。このように彼らの食生活から、彼らの体内にはカルシウムが不足していることが推察されるのです。

 カルシウムは、あらゆる細胞の機能に関係し、生理機能に重要な役割を果たしています。血中カルシウムの不足が起こると、恒常性を保とうとする体の働きから、カルシウムが貯蔵庫である骨から取り出され、その状態が続くと骨はもろくなってしまいます。カルシウムイオンは、刺激に対する神経細胞の感受性および筋肉細胞の興奮性を抑制しています。また、腎臓の組織呼吸や血液凝固にも大きく関与しています。血中カルシウムを一定に保てなくなると、精神的にいらいらしたり、動脈硬化、高血圧を起こしたりするのです。最近、「キレル」若者が社会問題になっています。学生さんを見ていると、食生活は若者の「キレル」原因の一端を担っているのであろうと考えざるを得ないのです。

 ところで、味覚の発達は、胎生7ヶ月くらいから始まり、12歳頃までに完成します。子供の時に培った味覚が将来の健康状態を左右してしまうのですから、幼い頃から健全な食習慣をつけることがいかに重要であるかが解ります。私の両親は教師でしたが、祖父母が農業を、叔父が漁師を営んでいましたので、白菜や大根の煮物、完熟トマトサラダ、煮豆、わけぎのぬた、かれいのから揚げ、鯛のさしみ、鯒の煮付けなど、幼い頃から新鮮な野菜や果物と魚を食べて育ちました。また、近所に美味しい豆腐屋があり、豆腐や油揚げが毎日の食卓に登場しました。おやつの時間には、母の作ったおはぎや団子を食べたり、私や姉の作ったケーキでコーヒーを飲んだりしていました。朝、必ず皆が一緒に食卓で挨拶をして一日が始まり、帰宅するとまた食卓を囲んでその日あったことを話すのが毎日の習慣でした。食事量が少ないと調子が悪いのかと家族が気遣い、食べ方のマナーをそこでしつけられ、食べ物の大切さを教育される・・・そういう大家族の食卓がとても懐かしいです。大勢で食べれば、会話も弾み、笑顔になります。子供の頃に「快」の感情とともに、食物の味が記憶されることは、非常に重要なことではないでしょうか。大学入学以来10年以上自炊をしていますが、やはり白米、魚、豆・豆製品、野菜を食材として選択することが多いですし、外食する時も和食が中心なのです。やはり、小さい頃から培った味覚が私の食生活を支配しているのでしょう。

 先日友人に、質問に答えてゆくと寿命を計算してくれるサイト
http://www.wakagaeri.com/index.html) を紹介され、私もやってみました。なんとこれから100年以上生きるという結果・・・その頃には、私は世界一長寿の記録を更新し、ギネスブックに載っているのでしょうか?

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