その1 その2
その1  健康教育について考える             作田 正義
 

さくた まさよし

昭和11年10月 広島の生まれ。
昭和43年11月から大阪大学助手、
昭和53年6月 大阪大学教授(歯学部口腔外科学第2講座)となる。
平成5年1月には大阪大学歯学部長となり、平成12年4月から大阪大学名誉教授。
厚労省医療技術参与(顧問医師)、民事調停委員(最高裁判所)の要職を務める。
 学会関係では日本口腔科学会名誉会員(元理事長)、その他、学会でも活躍。
その間、第7回全国ソフトウェアーコンファレンス優秀賞(平成3年)、
大阪府知事表彰(平成6年)などの賞を受ける。


 

  厄年という言葉がある。広辞苑によると、「陰陽家の説で、何らかの厄に逢うとし
て忌み慎まなければならぬとする年。男は25・42・60、女は19・33とい
う。特に42・33を大厄といい、その前後の年を前厄、後厄といって恐れ慎んだ」
とあった。男女それぞれに生涯の節目ともいうべき年齢があり、その年齢では何かよ
くないことが起こる可能性があるので注意しましょうということであろう。もちろ
ん、科学的根拠に基づいたものでないことは常識的には知っているが、この厄年齢は
別にして、人生には確かに節目節目があることは事実のようである。

 健康についても体調の変動をきたし易い年齢があり、その典型は思春期や更年期が
すぐに思い浮かぶ。近年の日本人では、平均寿命が女性で84歳、男性で77歳とい
うことであり、もっと高齢の厄年というのが現れるのではないかと疑ってしまう。私
は現在68歳になった。若い頃に二度ほど大病をしたことがある。幸いなことに、中
年以降はまずまずの健康体で過ごすことができている。更年期(以前は女性に特有な
ものであるといわれていたように思うが、最近は男性でも更年期があるといわれてい
るらしい)の年齢で特に問題が起こった記憶はない。しかし、この年齢になると、気
持ちだけは学生時代とあまり変わっていないつもりであるが、さすがに若い頃のよう
にはいかないことを痛感するようになってきた。最も困る点は記憶力である。とにか
く、記憶する力が極端に低下している。また多少、生活習慣病の傾向もみえてきた。

 我々が青年期までを過ごしてきた時代は、まだ感染症対策に重点が置かれていた頃
であり、塩分と高血圧との関係等の一部を除き、いわゆる生活習慣病を重視する傾向
はほとんどなかったように思われる。むしろ、肥満や運動不足等よりも、いかに栄養
をとるかといった問題のほうが重視されていたし、また生活実感としても、後者のほ
うがはるかに切実であった。そのために、少なくとも私は生活習慣病に対して頭では
わかっているものの、体に染み付いた行動として変容するまでには至っていない。
困ったことである。

 このようなことを縷縷書いたのは、最近、やや肥満傾向にあり、掛かりつけの医師
から体重を4−5kg減少させるように強くいわれているにもかかわらず、なかなか
うまく行かないことに悩んでいるからである。

 公衆衛生学のなかで、健康教育に関する方法論をみると、時代と共に変遷があり、
相当苦労していることがよく伺える。疾病構造や社会状況も変化しているので当然と
いえばそれまでであるが、若い頃に受けた健康教育が高齢になっても役に立つような
ものであることはまことに難しいことで、数十年先、一世紀先を見越した健康教育を
どのように展開していくかが問題である。それだけ長い生きしたので、どうでもよい
のではないかとの意見もあろうが、高齢者福祉やQOLが強く叫ばれ、さらには老人
を支える若者の負担を軽減するためにも、高齢者自身が健康により強く関心をもち、
健康的な生活を実践する世の中でありたいと願っている。

 
          
その2  これからの歯科でのアンチエイジング      亀田 晃
 

かめだ あきら

昭和45年 3月 日 本歯科大学大学院博士課程終了 
昭和45年 4月 日 本歯科大学 矯正学教室助手
昭和46年 4月 日 本歯科大学 矯正学教室講師
昭和47年 7月 日 本歯科大学 新潟歯学部付発令
昭和48年10月 日 本歯科大学 新潟歯学部歯科矯正学教室助教授
昭和49年 4月 日 本歯科大学 新潟歯学部付属病院歯科矯正歯科科長
昭和52年 4月 日 本歯科大学 新潟歯学部矯正学教室主任教授
平成 2 年 4月 日 本歯科大学大学院新潟歯学研究科教授
現在、日本歯科大学新潟歯学部歯科矯正学講座 主任教授

 
 最近の歯学の進歩は材料学を中心にいかに審美的に齲蝕を修復するかとか、補綴物をいかに審美的に回復するとか、いかに不正咬合の改善を奇麗に効率よくするか等、歯に注目された題材が多く、歯科なので歯に関するものが多いのは当然といえば当然である。しかし、小生が40年近くも歯科矯正学を行っていると、歯よりもむしろそれが植立している顎骨や歯槽骨の方がいわば土台となるものであり、もっともっと大切であり問題にすべきではないかと思う。

 小生が最近つくづく思うことは、歯科においては歯および歯列咬合に眼が行き過ぎてそれを支えている骨は比較的軽視されている。歯・歯列の長寿(denture stability)を目標とするならば、その土台となる骨の改善というか、いかに骨を若返らせるかということであり、いわゆる骨のアンチエイジングといわれるものに歯科はもっともっと力を入れなければならぬと思う。

 修復物がどんなに簡単に立派に出来ようが、歯列がどんなに奇麗に並ぼうが、どのようなテクニックや咬合理論があろうが、不正咬合の改善がどんなに進歩しようが、それを支持している骨が老化の一途を辿るようではもともこうもないというものである。従って、骨のアンチエイジングの研究ならびに実践に我々歯科医師は十分な努力をしなければならぬと考えている。

  ちなみに私自身は骨のアンチエイジングの一つの方法として、各種サイトカインを自らの体内に創出する作用のあるヒトプラセンタ【現在認可されているのはラエンネック(日本生物製剤)・メルスモン(メルスモン製薬)のみ】の適用を行っている。まだまだ結果は出てこないが、少なくとも期待はできると考えている。