「ウンチ」に纏わるエトセトラ       横塚 由美
 

よこつか ゆみ

香川県小豆島出身。
平成6年香川医大卒業。神経内科医。
大学院時代は、東京医科歯科大学分子医化学教室、獨協医大神経内科で免疫性神経疾患の研究に取り組む。その後、Johns Hopkins大学神経内科・神経科学へ留学。帰国後、明海大歯口腔微生物学講座助手。
目下の趣味は、料理と子育て。

 

 先日、41週3日の妊婦生活をめでたく終了しました。妊婦初期は便秘になりやすいと本に書かれているので、妊娠がわかってすぐに便秘予防にと青汁を購入しました。ところが、悪阻で食事が全く摂れなくなり、少し食べても全て吐いてしまうので、(このままでは危険だと思い)水分補給に心掛けました。水を大量に飲んだ結果、便秘ではなくむしろ下痢気味になってしまいました。駅や職場でも吐いたり下したりしてしまうので、通勤途中の駅やコンビニのトイレ情報が頭にインプットされていました。本当にあの頃は辛かったです。さらに、お腹がなかなか目立たなかったため、通勤中も誰も席を譲ってくれませんでした。妊娠してから普段なら座らない優先席を利用するようにしたのですが、そこには・・・本当は電源を切らなければならない携帯電話でメールに明け暮れる若い女性、足を組んで2人分のスペースをとる若者、ビールを飲んでいるおじさん・・・注意したいのをぐっと堪えていました。お腹が目立つようになってからも、一度チラッと見た後に新聞を持ち上げたり、目を閉じて気づかないふりをしたりする人達に何度も遭遇しました。平成15年12月から横浜市営地下鉄では、「全席優先席」という画期的な取り組みがなされているそうです。必要な人に自然に席を譲ることができるなら、固定の優先席など設置する必要はないということですが、固定の優先席に堂々と座っている上記のような人々が優先席と明記されていない座席を譲れるのかと疑うのは私だけでしょうか。しかし、離れた位置から優先席でない座席を譲ってくれた方も何人かいたので、この国もまだ捨てたものではないのかなとも思いました。

 話を便秘に戻します。私の主人は便秘症で、母親を大腸癌で亡くしていることもあり、昨年から私と共に自主的に大腸癌の検診を受け始めました。そんな彼は、通じにかなり気を配っていて、快食快便の私が感心するほどの徹底ぶりです。毎朝コーヒーを淹れて排便を促し(私たちの間では「ウンチ待機」と呼びます)、必ず同じ時間に一定時間きちんとトイレに座る習慣が身についています。独身の時から、蒟蒻や海藻などをよく食べ、キャベツは一人で1日一玉消費していたそうです。それでも排便が一日ないと、必ず便秘薬を使います。私は、もともと、野菜、海藻、蒟蒻などが好きだったので、あまり抵抗感なく彼の食生活に順応できましたが、先日、孫を見に来てくれた両親が、山盛りの千切りキャベツを青虫のように頬張る私たちに目を丸めていました。野菜料理を大皿につけると、私のも食べられてしまうので、面倒でも銘々皿に盛り付ける必要があります。そんな野菜好きな二人なので、昨年の野菜価格の高騰時には家計が圧迫されて困りました。

 さて、我が家のニューフェイスは、毎日貪るようにお乳を飲み、大人顔負けの大きなおなら(ただしあまり臭くない)をし、ヨーグルトのような酸性臭のするウンチをいっぱいしてすくすく成長しています。乳児の腸内細菌叢はいわゆる善玉菌であるビフィズス菌などが主体で、お乳の成分である乳糖を分解して酸を産生するため、このような匂いがするのです。彼女は今、細菌との共生に慣れる訓練をおなかの中でしているのだと思います。離乳食が始まると、徐々に成人の腸内細菌叢に近づき、おならも臭くなってきます。ウサギのように便を毎朝食べて、細菌をリサイクルして健康を維持することができれば楽ですが、人間はそういうわけにも参りません。そこで、ヨーグルトなどのプロバイオティクスをせっせと食べて、きれいな赤ちゃんの腸内細菌叢の状態にできるだけ近づける必要があるのです。かわいいこの子のウンチなら食べられそうな気もしますが、やっぱり無理かしら・・・。好物のかぼちゃサラダのヨーグルトドレッシングかけでさえ、最近あまり食卓に上らなくなりましたから。あっ彼女、顔を紅潮させ小さな拳を固めて、泣き始めました。すっぱい匂いです。はいはい、オムツ換えようね。お母さんは、今日も大忙しです。