このコーナーでは前月までのコラムを紹介しています。
     
 
 

8月

その1 桐山 健 骨粗鬆症治療の新時代
その2 大沼 鉄郎 アルキメデスと骨
     
           
    その1 骨粗鬆症治療の新時代   〜桐山 健〜      
   

<予防的治療の時代>
 近年の医療の役割は、肺炎、胆石、胃潰瘍などの症状のある病気を治すことから、高血圧、高脂血症、糖尿病など症状のほとんどない病気において、症状のある病気へと進行するのを予防する役割へと変化してきています。医療行為の成果は治療した病気が治ることでなく進行して新しい病気にならないことになり、治療の結果が患者さん一人一人では見えにくくなってきています。多くの患者さんを治療したデータでは、コレステロールを低下させる薬剤は、心筋梗塞などの心臓の病気の発病を20-40%も低下させることが判明しています。
また、高血圧患者さんを降圧剤で治療すると、脳出血などの発病を20-30%も低下させることができます。このような予防効果が高脂血症や高血圧の治療の本来の目的で、今話題の医療費を削減するのにも役立つと言われており、今後予防的医療行為はますます重要となっていくと考えられます。


<骨粗鬆症による骨折>
 このような中で、最近、大きく進歩した分野が骨粗鬆症です。骨粗鬆症は加齢とともに進行するために、疾病ではなく老化現象であるという考え方もありました。しかし、最近では、骨粗鬆症による骨折のうち、寝たきりになる可能性のある大腿骨頚部骨折(足の付け根の骨折)のみでなく、脊椎圧迫骨折(背骨がつぶれる骨折)も消化や呼吸機能に影響を与え、死亡率にさえ影響を与える事が判明してきました。骨粗鬆症は、世界的な高齢化社会の中にあって、骨折を起こす重要な疾患として再認識されてきています。


<骨粗鬆症の新しい治療>
最近になり、治療薬としてビスフォスフォネートという種類の薬剤が登場し、先ほどの足の付け根の骨折を50%にまで減少させることができるようになりました。この薬剤は、脊骨の骨折も約50%に減らし、背骨の骨折を何回も起こす確率はなんと80-90%に抑制することがわかっています。前述のコレステロールや高血圧の薬剤と比較すると、薬の効果がかなり高いことがおわかりと思います。ごく最近の研究では、この薬剤はコレステロールや高血圧の薬がほぼ一生の間服用を続ける必要があるのと異なり、一定期間のみ服用すると、その効果が一生涯持続する可能性が指摘されています。


<骨を増やす?>
骨の量は年齢とともに減少していくので、一度低下した骨量を増加させることはたいへん難しいのですが、これらの薬剤は骨量を増やすことができます。増えているかどうかは、腰の骨の量、もしくは足の付け根の骨の量をDXA(Dual X-ray Absorptiometry)という骨密度測定装置で測定することによって判定できます。血液や尿中の骨代謝マーカーという物質を測定することによっても、骨を増やす効果が出ているか、ある程度推定することができます。もちろん骨密度が増加すれば骨折を起こしにくくなるわけです。


<骨粗鬆症治療の新時代>
骨粗鬆症の治療は、予防的治療という考え方に基づいて、ここでご紹介した薬剤のみでなく、新しい効果の高い薬剤がどんどん開発されており、高齢化が進む現代社会において、患者さんにとって大きなダメージを与える骨折を未然に防ぐ医療手段が確立されてきたといえます。中高年の方は一度骨密度測定検査を受けて、自分の骨量を把握しておくとよいでしょう。50歳頃の女性の方で月経が終了する前後の方は、骨量が急速に減少するので、特に骨
密度検診をお勧めします。

     
   


桐山 健  きりやまたけし
諫早そよかぜクリニック院長
e-mail:tkiri23@mocha.ocn.ne.jp HP
昭和56年長崎大学医学部卒業
その後、長崎大学医学部、、国立佐賀病院
大分県立病院、琴海町立病院、オーストラリア
メルボルン大学、三洋骨研おかもと内科院長
などを経て、平成13年諫早そよかぜクリニック開設

     
       
 
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    その2  アルキメデスと骨   〜大沼 鉄郎〜      
    ギックリ腰というのは痛さは勿論ですが、その不意打ちが脅威です。50歳代まで私は頻繁にギックリ腰に悩まされました。腕時計を見ながら朝の出勤の身支度をして、靴を履こうとかがんだ瞬間にドンとやられる、といった具合です。思い当たる原因もなく前触れもなしですから、手の打ちようがありません。そのままの姿勢で、もう1センチも動けなくなります。
このギックリ腰のくせから抜け出すことができたのは、二人の方のアドバイスのお陰でした。一人は私の家からほど遠からぬ指圧の先生です。私が手探りで助けを求め、はじめて診ていただいたのですが、この先生は小学校の校長をなさっていたおり、ご自身が腰痛に苦しみ、それを指圧で治した経験をお持ちでした。退職後、人助けのつもりで指圧の治療院をひらかれたようです。この先生のアドバイスは、腰の筋肉を痛めるのは背中の筋肉よりもお腹の筋肉が弱いせいだ、あなたは腹筋を鍛えなさい、というものでした。痛いと言って手を当てる反対側に原因がある、と言われて、ああ、そうだったのかと納得したものでした。 
もう一人は私より若い知人で、頑丈な体格の持ち主なのにやっぱりギックリ腰にとりつかれていたそうです。彼は真向法という体操で治したと言って、それを私に教えてくれました。一日10分程度の簡単なものだというので、ものぐさの私も、それならばと始めたのですが、これも腹筋の運動が主になっているようで、さらにそれを自分向きに改造しながら続けているうちに、あの不意打ちを食わなくなりました。
そういう体操などをしているうちに、私は体を伸ばしたり曲げたりする仕掛けについて、ふと考えたことがあるのです。「背中や腹の筋肉を伸ばすとはどういうことだろう?」この疑問が出てくるのは、以前に筋肉細胞の観察をしたことがあって、そこでは筋肉細胞は収縮するときに大きな力を発揮するけれども、自分が伸びる力はなんにも無い、ということが見られたからです。筋肉細胞の収縮の反対の動作は弛緩といわれ、つまりだらっとするしか能がないわけです。たとえて言えば、筋肉細胞は綱引きは強いけれども、押し相撲はカラッキシだめということです。では手足を伸ばすとか背筋を伸ばすとか、あるいは筋肉を伸ばすというのは、どういう仕掛けによるのか。
ここは「骨」のコラムです。ですから答えは「骨のおかげ!」私などが説明するまでもなく、骨と筋肉が梃子の原理で働いて、体をうごかしているわけで、「体を伸ばす」のは筋肉だけではできません、すべて骨あってのこと、となるのです。
梃子と言ったついでに、梃子の原理を発見したアルキメデスのことを思いだしました。しかし、アルキメデスよりさきに、梃子はみんなが使っていたのでしょうから、この「発見」というのはピンとこない言葉です。「証明」といったらいいのか。それにしてもアルキメデスは骨が梃子になっているのを知っていたでしょうか。
ところで私の記憶では、アルキメデスは「宇宙のなかに支点を置いてくれれば、梃子を使って地球でも動かして見せる」と言ったとか。この記憶は怪しいですね。アルキメデスが地動説だったとは思えませんから。でも、そんな説明図をどこかで見た記憶があるような気がするのですが、どなたか、正しい説を教えて頂けないでしょうか。
     
   
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大沼 鉄郎 おおぬまてつろう
科学映画制作会社(株)ヨネプロ社長

1928年生まれ。東京大学経済学部卒業。
在学中より映画に没頭、卒業後記録映画の世界へ。
1958年に制作した科学映画「ミクロの世界」で各種国際賞、
文部大臣賞、NHK賞など受賞、以後科学映画の分野で仕事を続ける。
美術映画、記録映画など作品多数。
     
       
     
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