12月

その1 石見 佳子 トクホ(特定保健用食品)の話
その2 岩坪 レイ子 暮らしと歯   
その3 高倉 翔 私と「納豆」と「牛乳」
その4 日高 敏隆 骨と脊髄   
(五十音順)
     
           
    その1 トクホ(特定保健用食品)の話  〜石見 佳子〜
     
    みなさん、“トクホ”をご存じですか? “トクホ”とは厚生労働省が許可している特定保健用食品のことで、その数は現在300品目にものぼります。食品には3つの機能(栄養、味覚、体調調節)がありますが、トクホは3つ目の体調調節を目的とした食品です。すなわち、私達の健康の保持と増進を目的としている食品なのです。表示が許可されている項目は次の10項目で、括弧内は保健機能を示す成分(関与成分)を表しています。
1. おなかの調子を整える食品(関与成分:食物繊維、ビフィズス菌など)
2. 血圧が高めの方に適する食品(ペプチドなど)
3. コレステロールが高めの方に適する食品(大豆たんぱくなど)
4. 血糖値が気になる方に適する食品(難消化性デキストリンなど)
5. ミネラルの吸収を助ける食品(カゼインホスホペプチド:CPP、フラクトオリゴ糖など)
6. 食後の血中の中性脂肪を抑える食品(ジアシルグリセロールなど)
7. 虫歯の原因になりにくい食品(糖アルコールなど)
8. 歯の健康の維持に役立つ食品(CPP-非結晶リン酸カルシウムなど)
9. 体脂肪がつきにくい食品(ジアシルグリセロール)
10.骨の健康が気になる方の食品(大豆イソフラボン、ビタミンK2高産生納豆
 菌、乳塩基性たんぱく:MBPなど)
 今回は最後の項目の“骨の健康が気になる方の食品”についてご説明したいと思います。女性は閉経を迎えると女性ホルモンの産生が低下して急激に骨の量が減少しますので、若いころに十分に骨を作っておかないと、骨粗鬆症になってしまいます(現在、65歳以上の女性の約半数が骨粗鬆症であるといわれています)。大豆イソフラボンは大豆に含まれている弱い女性ホルモン様作用を示す成分で、閉経期の女性の骨吸収を抑えます。すなわち、閉経機の女性の骨のカルシウムを維持します。イソフラボンは豆腐や豆乳に含まれていますが、トクホでは「大豆芽茶」、「黒豆茶」、「黒豆豆乳」が許可されています。一方、ビタミンk2は骨の形成に関係するたんぱく質の合成に必要なビタミンです。トクホではビタミンK2を沢山合成する納豆菌「骨元気」シリーズが許可されています。MBPは牛乳に含まれている成分で、骨密度を高める働きがあります。骨密度を高めるには牛乳を1日1リットル程飲まなければならないのですが、トクホの「毎日骨ケアMBP」(清涼飲料水)を毎日1本6ヶ月間飲むことにより、骨密度(踵の骨および荷重のない手の骨)が増加することが明らかになっています。
 骨粗鬆症の予防にはカルシウムとビタミンDを十分にとること、それとよく運動をすること(週に3回1時間のウオーキングが効果的!)ことが有効ですが、閉経期にはこのようなトクホ(特定保健用食品)を上手に利用するのも一つの方法ですね。
     
         
   
著者近影


石見佳子(いしみ よしこ)

東京理科大学薬学部卒業。昭和大学歯学部、三菱生命科学研究所を経て
1994年より国立健康・栄養研究所勤務。
現在、食品表示分析・企画研究部食品成分機能表示研究室長。
骨粗鬆症の予防法の確立を目指している。

     
       
 
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    その2  暮らしと歯   〜岩坪 レイ子〜      
   
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カラコラム ゴマ村 アリ坊やと

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カラコラム ゴマ村 ハッサン少年と

 20世紀の後半を私は歯科医師として生きてきた。戦後の食生活の大きな変化にともなって虫歯が著しく増加し、相対的歯科医不足は社会問題として日々マスコミに取りあげられた。
 1974年、私はヒマラヤの寒村を訪れる機会を得た。パキスタンの山奥、カラコラムの一寒村であった。食物はジャガイモ、ソバ、大根、羊の乳からつくったチーズであった。そこで私は驚くほど健康な子供の歯を見てきた。日本に帰った私は、治療もさることながら予防の必要性を感じ、予防教育にとりくんだ。その対象は病院内外に及んだ。

地図
 

     
1983年、私は再びネパールの山奥、民族的には前回のカラコラムと同じチベット族の村で歯の調査を行い、齲蝕、歯周病が少なく、また歯列の乱れのないことを見てきた。この地域は食糧が乏しく、毎年、何人かの村人が餓死するという貧しい地域であった。
 1989年、今度は中国雲南省の酉北部、チベット系住氏の住む地域で調査を行った。ここでは過去2回の調査結果とは異なり、齲蝕と歯周病が多発していた。
前回2回の遠征地と同様、ここでも歯科医は存在せず、歯ブラシの習慣は全くなかった。歯科疾患多発の原因は炭水化物を微粒子として精製して食べる、また少しではあるが砂糖を手に入れることができるということ、さらに過去2回の地域と比較して水力発電による電気が用いられ、煮炊きが簡単にできると言うこと、かつ、はるかに食糧が豊富であり、頻繁に食べ物が口に入ることではないかと推察される。これまでの調査地域では口の中が食物によって汚されるほどの食物はないのであった。
 歯科医療の恩恵を全く受けることのない地域で、しかも同じ民族の歯を調査した結果から、環境や暮らしが歯に大きな影響を及ぼすことを知った。
   
著者近影1

岩坪レイ子(いわつぼ れいこ)

1935年生まれ。大阪大学歯学部卒業、京都大学大学院博士課程修了。
京大病院、京都第一赤十字病院で小児から高齢者、および有病者の歯科治療に従事。
その間ヒマラヤ遠征に三回参加。村人の歯の調査を行い、
食生活と歯科疾患の関連を深く認識する。
現在京都市内で開業。これまでの経験をもとに一口腔単位の診療を行っている。
著書「ヒマラヤ診療所日記」「ヒマラヤ診療旅行」「歯/生命のかがやき」
「暮らしと歯」など。
     
       
 
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    その3 私と「納豆」と「牛乳」      〜高倉 翔〜      
     「納豆」は健康食品の<横綱格>といわれております。旅行中は別として、私は、その「納豆」を、毎朝、欠かさず口にしております・しかも「納豆」に「大根おろし」と「すり胡麻(ごま)」を混ぜ合わせております。
実は、これには、私なりの理由があります。それは、次のような子どもの頃の体験です。私の父親は外科医でしたが、太平洋戦争時に軍医として召集され・終戦の半年前にニューギニアの地で戦死しました。その父が、南方戦線へ向かうとき、「納豆」菌を持っていきました。当時、私は国民学校の4年生でしたが、マラリヤの予防や治療に効果があるといわれているので、戦地で試してみたい」といっていたことを思い出します。
また、父は、好き嫌いの多かった私に、「これはうまい」と唱えて食べれば「なんでもうまい」といい、さらに、毎日、「大根おろし」と「すり胡麻」を食べるようにともいっておりました。
私が「納豆」を常食としている理由には、もう一つ、私が育った《地理的風土》ともいえるものがあります。私は、茨城県・水戸市の出身です。よく、水戸の知名度(名物)は「水戸黄門と納豆だけ」などと揶揄(やゆ)されますが、事実、私は、子どもの頃から、藁(わら)筒に入った手作りの「納豆」とともに育ってきました。
大阪勤務の12年間、その「納豆」を手に入れるために、阪神百貨店の地下にある県別の名店街へ足を運び、茨城県の店で、藁筒に入った「納豆」を求めました。「納豆」は、関西では「腐つた豆」として歓迎されておらず、阪神電車の中で、「臭い」と怪訝(けげん)な顔をされたこともありました。
ところで、その茨城県(または、水戸市)についてですが、昭和37年に、東海村に建設された「原子力研究所の国産第一号炉に点火」され、続いて、昭和40年代後半以降、「筑波研究学園都市」が整備されてきますと「先端科学技術の中心、東海村と筑波研究学園都市を有する茨城県」へのイメージ・チェンジが進んでいきました。
それが、平成11年の9月31日に、全くの「人為的ミス」によって起こった東海村《JCO臨界事故》は、「原子力の安全に絶対はないこと」、「危険は防げるという考えは幻想に過ぎないこと」を再確認する結果となりました。
「納豆」の話に戻りますが、事故直後、「放射性物質なし」の検査報告にもかかわらず、70%のシェァを占めるといわれる茨城県産の「納豆」を含めて、地元産品の農産物への影響も懸念されました。いわゆる「風評被害」です。事実、事故の翌日、妻が近所のスーパーで、小粒の茨城県産の「納豆」を選んでおりますと、近くに居合わせたご婦人が、ご親切にも「茨城の『納豆』は危険ですよ」と忠告して下さったとか。何事にとっても、口コミの影響は恐ろしいものです。
ただ、私は、それ以後も、「納豆」を健康食品と信じて、毎朝、茨城産の「納豆」を口にしております。
もう一つ、ここ二・三年、妻ともども、「牛乳」を良く飲むようになりました・きっかけは、久米川正好先生から、骨粗鬆症を防ぐ(骨折予防の)ためには、「午乳を飲むことと歩くこと」とのアドバイスをいただいたことによります。私の常用食の「納豆」と「牛乳」に含まれるカルシウム量を比較すると、前者「二分の一パック」(50グラム)に45ミリグラム、後者「瓶一本」(200グラム)に220ミリグラムだそうです。MBPのお話しも伺いました。   そのような次第で、私は、今では、子供の頃からの常用食の「納豆」とともに、久米川先生のアドバイスによる「牛乳」の愛好家になっております。もっとも、久米川先生は、「牛乳」が、気になる脳の老化防止に効果があるかどうかは教えてくださいませんでした。
     
   

著者近影 1

高倉翔(たかくら しょう)

明海大学学長、理事、筑波大学名誉教授、
文部科学省中央審議会委員、専門は教育行政学。
     
       
 
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    その4 骨と脊髄   〜日高敏隆〜      
    著者近影 ぼくはスポーツの感覚がまったくない。できるのは平泳ぎか伸しでのんびり泳ぐことと、ゆっくりゆっくり山を登ることだけであった。急速に動くとか高いところに登るとかいうことも苦手であり、100メートル競走はいつもビリであった。そのかわり転げて手や足を折るなどということもなかった。
 ところが、京大を定年になる何年か前ごろから、足のくるぶしの関節がときどき痛むようになった。
 激しい運動など何もしていないし、何が原因なのだか、医者にいってもわからない。けれど少し山を歩いたりすると、どちらかの足首が腫れてきて痛くなるのである。冷やしても温めても、かんたんには治らない。いつもサロンパスやモビラートをかばんにいれて持ち歩くのが習慣になった。
 右足首の関節が痛くなると、体はそれをかばうのであろう。今度は左足首が痛くなる。すると次には右ひざの関節が痛み出す。
 そんなわけで京大を定年になるころは、毎日足のどこかの関節が痛んでいるようになった。忙しくて医者にいくこともできず、痛む足を引きずってのろのろ歩く日がつづいて、われながら年とったなあと情けない思いをしていた。
 ところがそのうちに、腕がしびれて力がなくなってきた。サントリーの角瓶が片手では持ち上がらない。やむなく両手でもって、というようにして、毎晩のウィスキーだけは欠かさなかった。 
 あるとき京大大学院生の本田君にそのことを話した。アメリカン・フットボールをやっている本田君はすかさず言った。“先生、手と足にきたら首ですよ。すぐ整形の先生のところへ行きなさい。”
 彼に紹介された医者でX線写真をとってもらうと、明らかに頸椎にトラブルがあるという。早速、京大の梶先生のところへいくと、MRIで診てもらいなさいという。
 MRIの写真を見てぼくは愕然とした。第五、第六頸椎の椎間板がヘルニアになって突きだし、脊髄がぎゅっとくびれている。“先生、ここでプツンと切れてしまうのではありませんか?”
 “いや、そんなことはないけど、これはすぐ手術しなくては。”梶先生は武田病院の脳神経外科の名医西浦先生へ万端をたのんでくれた。
 まもなく1994年12月末に手術。あとで記念にもらったビデオを見ると、電気ドリルで頸椎をぶち抜き、ヘルニアになった椎間板を除去する大手術であった。
 手術が終わって病室へ戻ると、“トイレは自分で歩いていって下さい。”“先生、もう歩けるんですか?”“大丈夫です。”
 半信半疑で歩いてみると、何と足はすっすと動くではないか!そして何日かするうちに、関節の痛みはうそのように消えてしまった。
がっちりと首当てをして、どんな偉い人にも絶対におじぎをしてはいけませんよという先生のことばを守って約3ヶ月。1995年4月には、新設の滋賀県立大学の入学式で、元気いっぱいに初代学長として、かなりユニークな訓辞を述べた。
それからもう8年。関節の痛みを感じたことはない。肩や腰の凝りもまったくなくなってしまった。6年にわたる学長在任中、大学の公用車で動きまわっているうちに、下腿の筋肉はいささか弱って歩くのが辛くなったけれど、関節や骨には何のトラブルもない。神経の栄養作用という、かつて読んだ旧ソ連の古い本を、今さらのように思いだしている。
     
   
著者近影

日高敏隆(ひだか としたか)

1930年生まれ。東京大学理学部動物学科卒業。
東京農工大学教授、京都大学教授、京都大学理学部長、
滋賀県立大学初代学長経て、
現在、文部科学省総合地球環境学研究所所長。
京都大学名誉教授。専門は動物行動学。
     
       
     
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