健康づくりを骨から始めましょう
       
     
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  このコーナーでは前月までのコラムを紹介しています。
     
 

 

10月

その1 金 聖響 気持ちと体のメンテナンス
その2 岡崎 成美 骨の呪文
その3 廣 豊 健康についての私見
その4 手塚 建一 タクラマカン砂漠に骨を見た
その5 後藤 仁敏 骨の過去と未来
     
           
    その1 気持ちと体のメンテナンス   〜金 聖響〜
聞き手 「ミセス」岡崎成美 Q
     
   

3歳でピアノ、7歳よりヴアイオリンのレッスンを始めて、ボストン大学哲学科を卒業。その後、ニューイングランド音楽院大学院で指揮を学んだ金聖響さんは、1970年生まれの新進指揮者として、人気急上昇中です。
大活躍の裏にどんな健康の秘訣がかくされているのかを伺ってみました。
聞き手 「ミセス」岡崎成美 Q

     
    Q.これまで食生活でどんなところに気をつけてきましたか?
 物理学を専攻していた父親の関係で14歳の時に渡米したのですが、その時、身長が150センチしかありませんでした。しかし、母親はもともと食生活にはうるさいタイプでしたし、環境が変わったことに配慮したせいか、用意してくれたメニューはカルシウムたっぷりだったと思います。そのおかげで、17歳の時には175センチを越えるまでに背が伸びたんです。

Q.成長期とはいえ、4年で25センチはすごいですね。
 はい、高度成長期でした(笑)。

Q.メニューのほかには思い当たることはありますか。
 牛乳ですね。一日2リットルは飲んでいましたから。ちなみに骨を折った事は一度もありません。これでもサッカー選手だったんですが、怪我も少なかったですね。

Q.昔から健康には気をつけているのですね。きっとコンサートが近づいても、自分の体には配慮しているとお見受けしました。
 そうはうまく話は運びません(笑)。やっぱり練習から本番までほとんど食べられなくなりますから。コンサートの前は飲み物だけという不健康な状態です。アミノ酸の錠剤(筋肉疲労を緩和させる為です)や滋養強壮の漢方薬を飲んだり。オーケストラとの練習自体、はじまる時間が不規則なので、どうしてもいけません。睡眠時間は3時間半〜6時間ですね。

Q.それは大変。思っている以上に指揮者の方はストレスがたまるようですね。それでは、逆にコンサートが終わった後の気持ちと体力のメンテナンスについてお聞かせくださいますか。
 自分の趣味に没頭すること。ゴルフ、読書、映画鑑賞、スポーツ観戦、パソコン(作り&いじり)。ですが、次の演奏会が控えている場合はすぐに切り替えて楽譜を読む時間を必要とするので、メンテというよりも緊張の持続が肝心です。4,5日空く場合は楽譜も読みつつ、1日は8時間くらい寝られます。やはり、気持ちのメンテが一番難しいですね。終わった演奏会が良かった場合は気持ちよく切り替えるが出来ますが、自分で納得出来なかった本番の場合は復習や反省をしつつ次へいくのであまりスムーズではありません。

Q.気持ちの切り替えは上手なタイプですか?
 いいえ、時間がかかる方だと思いますね。それでも、適度な休息がないとフレッシュな気持ちで楽譜も読めないですし、心から音楽を楽しめなくなるのです。
 本日はどうもありがとうございました。 
     
   

著者近影1

金聖響 きむせいきょう
今後の金聖響さんの公演は下記の通り。
・10月12日(土) 17:00開演 大阪 ザ・シンフォニーホール
 「開館20周年記念ガラ・コンサート」 関西フィルハーモニー管弦楽団
・10月15日(火) 19:00開演 東京オペラシティ コンサートホール
 辻井伸之(ピアノ)/東京交響楽団
・10月24日(木) 19:00開演 大阪 ザ・シンフォニーホール
「T-Square meets 聖響」 関西フィルハーモニー管弦楽団

     
       
 
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    その2  骨の呪文   〜岡崎 成美〜      
    ものいうほね

 W・スタイグの書いた絵本に『ものいうほね』という傑作がある。ピンク色のワンピースを着た豚の少女が、おしゃべりのできる一本の骨に野原で出会うところからはじまる物語だ。この骨はしゃべるどころか、ラッパや風の音やいびきなどの効果音まで自在に出すことができるので、その楽しさにひかれて豚の少女はバッグにこの骨を入れて散歩を始める。クライマックスは、豚の少女が狐に食べられそうになるところだ。絶体絶命のピンチだが、骨が魔女の呪文を唱え、狐をネズミの大きさにして危機を脱出する。のどかさのある絵だけに、余計、物語のシュールさが際だつ絵本である。骨がしゃべるという設定からしておかしい。
 だが、もし、この絵本のように、自分の身体の骨がしゃべり出したらどうだろう。それを想像すると、絵本よりもっとおかしいではないか。
 たとえば私の骨が私にささやくのである。
「旦那、今日は疲れてるようですぜ」「最近、カルシウムとっていないじゃありませんか。もうちょっとあっしに協力してくれなきゃ」
などと警告を発してくれるのだ。そうすれば、今より健康に暮らせるのではないか。
 しかし、こちらの気分を無視してしゃべられたら不愉快になるさ、と思う。骨細胞がしゃべりだして「今日はもっと歩いてくれなきゃ! たくさん骨を作ってあげられませんよ」などと疲れ切った退社時に言われたらしゃくにさわるだろう。
 「今日も酒を飲みに行くんですか?いい加減にしたらどうかねぇ」とまで言われたら、口うるさい女房が体の中に住んでいるようではないか。おまけに、家にはおそろしい女房が現存するから二重の責め苦を味わうことになる。この責め苦のストレスは並大抵のレベルではない。ここは骨が健康な状態でいることと新たなストレス発生に耐えることとの収支を計算する必要がある。
 願わくば“ものいうほね”が魔女の呪文で狐を退散させたように、骨が異常をきたす、その危機一髪のときだけ呪文を唱えて助けてくれるとありがたい。
 なるほど俗人の健康観は身勝手なものだ。
岡崎 成美 ミセス編集部
     
   


岡崎 成美 おかざきしげみ
1976年早稲田大学教育学部入学。
サークルは「歴史文学ロマンの会」に所属。
第四代幹事長。
80年同大学卒業後、文化出版局入社。
現在「ミセス」編集部所属。
     
       
 
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    その3 健康についての私見      〜廣 豊〜      
     私は健康について書くほどそれに自信があるわけではありませんし、又健康を維持するための方策に至っては、人様の前で発表するほどのこともやっておりませんので、私の履歴を中心に書くことにします。
 若い頃は重電機の設計に従事しておりました。日本の高度成長時代でして、次から次へと新製品、記録品の設計をやらねばならず、超多忙でした。同僚の中にも過労で倒れる人もおりました。重電機の設計は地味な仕事ながら責任は重大でして、発電所が停止したり、新幹線の電車が止ったりしますと大問題ですし、品質の殆どが設計の善し悪しで決まりますので、その責任の重圧は大変なものでした。それに地味な仕事ですのでやりたがらな
い人もいました。私も最初は別にこの仕事が好きではなかったのですが途中から大好きになりまして、会社に行くのが楽しくなってきました。言い換えれば会社ではストレスを全く感じなかったと云えます。これが健康を保ってきた最大の原因であったのではないかと思います。
 40才頃からはマネージメントの仕事が中心になってきまして色々私にとっては経験したことの無い製品を担当してきました。自動車の部品や化学材料、電子部品などです。その時にもその製品を好きになることを第一に考えてやってきました。 もう一つは好奇心旺盛でないかと思います。設計技術者の重要な資質に好奇心の旺盛なことが挙げられています。この訓練をするのですが、私も好奇心が少しある方になりまして、健康法に興味を
持ち片っ端から試してみました。そうして自分の身体に合ったのを見付けてやってきました。今でも続けていますのが玄米食です。これは約40年やっています。色々な健康法をやっていると云うだけで安心した気分になってストレスが無くなります。
 どうやら仕事が好きになって、好奇心旺盛であると云うのがこれまで私の健康を保ってきてくれた大きな要因のような気がします。
     
   

著者近影1
廣 豊ひろゆたか
日立エーアイシー(株)社長
昭和10年1月2日生まれ。
重電気系の技術者としてスタート、約20年間技術職に従事する。
最近の20年間はマネージャー的な仕事に従事、現在に至る。
hiro-yutaka@hitachi-aic.com
     
       
 
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    その4 タクラマカン砂漠に骨を見た    〜手塚 建一〜
     
      先日、学会のオプショナルツアーというにはあまりにも過酷なタクラマカン砂漠一周の旅を体験した。日本がすっぽりと入ってしまう乾ききった砂漠の砂には、風でできたきれいな縞模様がどこまでも、本当にどこまでも続いていた。
 他の旅行者やガイドがあまりの単調さに眠りこけている傍らで、私は砂の縞模様から目が離せずに何時間も砂漠を眺めていた。よもや、こんなところで世界最大級のTuringパターンに出会おうとは、、。持っていたデジカメで、何十枚も写真を撮ったが、わたしの目が見たパターンほど鮮明には写っていなかった。おそらく、わたしの視神経回路がなんらかの強調作用を示したに違いない。
わたしが顕微鏡の下に、タクラマカン砂漠と同じ模様を見つけたのは3年前になる。骨の細胞が作るその模様はあまりにも美しく、やはり飽きもせず眺めていたのを憶えている。生命の誕生に、何かしら必然的な力が働いたと考えれば、砂漠の砂と骨の細胞に共通点があるのも偶然ではないだろう。
敦煌市の近くの鳴沙山の砂は、あまりきれいな模様を持っていなかった。サンプルとして持ち帰った砂を比べると、タクラマカン砂漠の砂の方がずっと細かく、サラサラとしている。
日本の汚れた砂には、あのきれいな縞模様は期待できそうにない。そう思ったとき、ふと自分の体の中の縞模様が心配になった。
「なぜひとは美しいと感じるのでしょう?」
これは、さるお酒の席で多田富雄先生に頂いた質問。今なら「それは、ものがあるべき姿をしているからでしょう」と答えるかもしれない。
     
   

著者近影
手塚 建一てづかけんいち
1964年東京都生まれ。1987年京都大学卒業。
製薬会社研究員、大学講師などを経て、現在岐阜大学助教授
骨のコンピュータシミュレーション「iBone」を作製中
tezuka@cc.gifu-u.ac.jp
HP
     
       
 
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    その5 骨の過去と未来     〜後藤 仁敏〜
     
    ヒト大腿骨

写真はヒトの大腿骨の断面
骨は、脊椎動物だけでなく、無脊椎動物にも「骨格」というものが広く存在している。貝類の貝殻やサンゴの骨格から、単細胞の有孔虫の殻まで、さまざまな動物が石灰質の硬い組織をもっている。これらの「骨格」は、からだの支持や運動、内部の臓器の保護まで、私たちの骨と同じような役割を果たしている。
 しかし、動物がこのような硬い組織を持つようになったのは、そのような積極的な役割ではなく、むしろ骨ははじめ排泄物として形成されたと言われている。
 カルシウムは今でこそ、私たちが取らなければならない栄養素であるが、私たちが大昔に棲んでいた海のなかにはむしろ過剰なほど存在していた元素であったと想像されている。このカルシウムという元素は、からだのなかでは炭酸やリン酸と結合して石灰塩をつくるもので、それが普通の細胞や組織のなかで起これば、細胞死を招く「毒」となったのである。ちょうど、ミトコンドリアをもたない細胞にとって、酸素が何でも酸化してしまう「猛毒」であったのと同じである。
 私たちの先祖は、このような「毒」としてのカルシウムを血液中から排出する必要にかられて、体表にカルシウム塩を沈着させたものといえる。こうして最初の骨は、いろいろな臓器の端に「湯垢」のようにこびり着いた「排泄物」、いわば「負の形象」として形成されたものであった。この際、節足動物や軟体動物ではからだの外側に「骨格」を造ったので、陸上で動きまわるのには不利となった。脊椎動物では、からだのなかに骨を造ったので、陸上で動きまわるのに、都合がよかったのであった。それで、陸上では、脊椎動物が繁栄することになった。
 そして、脊椎動物では、骨は、海からの上陸にともなって、からだの支持と運動になくてはならない「正の形象」に変化したのである。骨の物理的化学的性質は、まさに地球上での運動のためにふさわしいものとして進化した。
 ところが、私たちは今や、宇宙にまで生活圏を広げようとしている。無重力の宇宙では、骨はまったく異なる条件のもとに置かれる。宇宙飛行士の骨は、激しい筋力トレーニングをしないと、どんどん溶けてしまうことが知られている。老人にみられる骨粗鬆症が急激に起こるのだ。私たちは、別に宇宙まで行かなくてもこの病気にかかる。骨粗鬆症では、必要な骨は溶けてもろくなり、骨から溶け出たカルシウムはなんと動脈の壁に沈着し、動脈硬化を進行させ、高血圧症を引き起こすのだ。「泣き面に蜂」とはこのことである。カルシウムは再び「毒」となって私たちのからだを破壊するのだ。
 こうして、「負の形象」として形成された骨は、「正の形象」となって私たちのからだの支持・運動に役立つのであるが、やがて年月を減ると再び「負の形象」にもどって、私たちのからだをむしばむのである。まるで、カルシウムを利用した罰があたったとも言える。
 しかし、すべての人が骨粗鬆症にかかるのではない。若いうちからカルシウムを適度に取り、歳をとってもよく運動する人では、骨は健康でありつづける。骨の過去を知り、未来を予測することで、健康な生活を実現したいものである。
     
   
後藤 仁敏ごとうまさとし
鶴見大学歯学部
1946年、愛知県生まれ。
東京教育大学理学部地質学鉱物学専攻卒業、同大学院理学研究科修士課程修了。
東京医科歯科大学歯学部口腔解剖学教室助手をへて、鶴見大学歯学部解剖学教室助教授。
脊椎動物の骨と歯の起源と進化を研究。著書に『歯の比較解剖学』
『歯のはなし・なんの歯この歯』(以上、医歯薬出版)、『新・ヒトの解剖』
(築地書館)、『唯臓論』(風人社)など。
     
           
     
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