コラム
健康づくりを骨から始めましょう
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このコーナーは各界でご活躍の方々にお願いしております。
4月
その1 中井 宏之 「歯科のイメージが変わりつつあります」
その2 松本 京子 「健康で仕事を続けられることの幸せ」
その3 山下 佐英 「お年寄りが危ない」
   
五十音順

その1 歯科のイメージが変わりつつあります 〜中井 宏之〜

中井氏近影なかい ひろゆき

1961年 大阪歯科大学卒業。1972年 城西歯科大学(現:明海大学歯学部)助教授を経て、
1982年岡山大学歯学部教授に就任。現在は岡山歯科技工専門学院非常勤講師を務める。
専攻は歯科理工学(歯科材料・器機学)。歯科医師、歯学博士。

 歯や口の健康の重要さも、多くの人に認められるようになって来ました。以前のように“歯みたいなもの”とか、“歯の1本や2本”という乱暴な言葉を聞くことは少なくなりました。喜ばしいことです。

 「衣食足して礼節を知る」と言います。このことは歯科の医療にも当てはまります。“とりあえず痛みを止めて欲しい、それで充分だ”というところから、“とにかく噛めるようにして欲しい”となり、“快適に噛めるようにして欲しい”と希望が進みました。

 一方で、歯の役割には個性的な顔をつくるという大事なことがありますので、その面からの要求も高くなってきました。最近では、“歯並びはその人の人格や社会的なステータスを表わす”という言葉さえも聞かれるようになりました。“患者さん”の要求は、有名なマズローの法則によく合致しています。

 今、社会補償制度にはこれらの要求をどこまでカバー出来るのか、カバーすべきなのかが問題になっています。要するに、歯科医療においては何を社会補償の対象とすべきなのかを改めて詰めておく必要があることを示しているのです。 どのように優れた材料や技術があっても、これを多くの人に用いることが出来なければ社会的な意義は失われてしまいます。この場合、鍵を握っているのは経済的な問題であるのは言うまでもありません。

 生命に関わることの少ない歯科医療は、社会補償の上ではどのように評価されるべきなのでしょうか。

 最近になって、歯や口の働きが全身の健康に深く関わっていることが客観的な事実として分かってきました。
健康増進法という健康に関する一種の基本法も出来ました。

 健康は文化であり、健康保険が病気の治療のためではなく、本来の目的である健康のために多く使用されることを期待します。ここへ来て、やっと多くの人が持っている“明るい笑顔で美味しく食べ、より人間らしく健康で文化的な生活をしたい”という人間の基本に関わることが具体化し始めたということであり、全く嬉しいことです。

 今、歯科は“健康”をキーワードにして大きく方向を変えつつあります。あとわずかで歯科のイメージが一変し、歯科医師も現在とは違う姿となっていることでしょう。

 楽しみなことです。

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その2 健康で仕事を続けられることの幸せ 〜松本 京子〜

松本氏近影まつもと きょうこ

ソシアルダンス衣装の販売を手掛けた草分け的存在。
現在はフォーメーション衣装、ラテンダンス衣装、モダンダンス衣装などのデザインを手掛け、
幅広い分野で活躍される。

松本氏製作ダンスドレス 63歳会社経営の女性です。
 忘れられません。昨年6月13日(金)、その日は法人会1回の経営者倫理講演会の日でした。
 埼玉県全市より約400名のお客様をお迎えして始まりました。

 今日は最後のお礼のご挨拶の大役もあり、朝から精一杯おしゃれをしてお客様に失礼のないようにと張り切っていました。

 ところが、中間で3階から2階へ下りる階段で靴のヒールが引っかかり、体のバランスを崩してしまい、一瞬、頭から落ちると感じました。とっさに左手で手すりをつかみ落下は逃れたものの、58kgの体重が全部肩にかかり、気がつくと全身から血の気が引き、腕はブラブラになり、でもその時は痛さより今日の役目が務まるかと頭の中で一杯でした。

 幸い、仲間に整骨院の先生が同席していたので、応急手当をしていただき、その日は無事に終わりました。

 翌日、レントゲンの結果、上腕骨骨折とのこと。ギプスの巻物と首から白の布で腕をつり、帰り際に看護婦さんの「仕事は出来ませんよ!!」と注意の言葉を後に聞き。さほど痛くなかったので、骨折なんてこんなものかと軽く考え、そのまま仕事場へ直行。会社は衣装販売の接客業のため、仕事中は白の吊布もギプス代わりの巻物も邪魔になり、毎日通院はしていましたが、店に帰るとはずしてしまう生活を1ヶ月半位続けていたでしょうか。日がたつにつれ痛みが強くなり、担当の先生にお話したところ、「それではリハビリしましょう。」と始めましたが一向に痛みはとれず、昼も夜も辛い毎日でした。

 怖かったのは、自分でも分かるほど人相が変わり、心ここにあらずで物忘れのひどいこと。大事な用件も忘れ、つい1時間前のことも思い出せない時もあり、あまりの変わりように社員達はけげんな目で私を見ています。

  しっかりしなくてはと思ってもどうにもならず、これは本当に痴呆症になったのかと不安になってきました。こんな惨めに年をとるのはイヤだと、たまらず休みをとったものの、散らかり放題の部屋の中で痛さで何にも出来ず亀のようにちぢこまっていました。 若い時から働き通しの人生で、今に休みが取れたら、あれもしよう、これもしたいと夢を描いていたお休みが、こんな有様ではとつくづく健康のありがたみが身にしみました。


松本氏近影 その後、医者を変えて痛みは嘘のように取れたのですが、7ヶ月過ぎた今でもリハビリに通院しています。
3人の子供達もやっと巣立ち、これから楽しい老後をと思っていた矢先の出来事でした。

 この貴重な経験のお陰で、骨に限らず、楽しく健康で年をとるのか、また病気で年をとるのかでは、天国と地獄の違いがあることを知りました。どちらの選択も自分自身と思い、これからはこの身体に感謝しながら健康管理をしていきたいと思っています。

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その3 お年寄りが危ない 〜山下 佐英〜

山下氏近影やました すけひで

鹿児島大学医学部卒業、大阪大学歯学部卒業。
文部省在外研究員としてドイツ留学、歯学部附属病院創設準備室長、初代医院長、 歯学部長事務取扱、大学院歯学研究科担当を経て
平成9年3月定年退官。
現在は、鹿児島大学名誉教授、医学博士、鹿児島医療技術専門学校副校長、 パールランド病院顧問、フェニックス介護老健施設長代理、鹿児島ハイテク専門学校講師を務める。 専門は、外科学、整形外科学、顎顔面外科学、再建外科学、口腔外科学、救急医学。 趣味は読書・園芸。

 私の勤めている介護老人保健施設には脳血管障害後遺症、心房細動さらにはペースメーカー埋め込みを受けている方、末期がん、痴呆症など計90名の方が入所されている。

 目配り気配りしているにも関わらず、洗面、食事、用便、リハビリなどの移動時に杖をつきながら滑ったり、ベッドや便座から車椅子への移動時に尻もちをついたり、食堂の椅子から歩行器へ移る際に転倒して、身体の各部を打撲・擦過傷あるいは骨折をきたし、現場での応急処置を施したり、近くの専門医へ搬送している今日この頃である。

 ご承知の通り、お年寄りは反射神経や筋肉が衰えているため、また、めまいやふらつきを起して、よく転倒される。単なる打撲や擦過傷、挫創、裂創、切創の応急処置は施設内で対処しているが、骨折となるとそう簡単にはいかない。そこで、診療情報報告書を持参させて専門医へ対診している。

 お預かりしている入所者が尻もちをついたと呼ばれて飛んでいくと、足が痛くて起き上がれない状態、早速診察すると予測どおり大腿骨頸部骨折の疑いがあり、あるいは胸・腰桂椎圧迫骨折をも伴うことがあり、専門医へ搬送してX線検査の結果、直ちに入院・手術・リハビリとなったゆえの返書を手にする。

 お年寄り(とくに女性)が骨粗鬆症を有していると、何といとも簡単に折れやすいものなのかと思い知らされる。骨の成分はCaを主としたリン酸カルシウムの形で蓄えられており、また、骨の発育は軟骨内骨化と線維性骨化の2つの異なるメカニズムにより営まれており、生涯を通じて吸収と再生が行われている。

 すなわち、骨をつくる細胞は骨の有機成分とくに膠原線維を生産して、それが細胞外に放出され、そこにCa塩の結晶が沈着して、次から次へと層板状に積み重ねられて骨はつくられている。

 しかし、ひとたび骨代謝に関与している骨芽細胞と破骨細胞の両者のバランスが壊れて溶け出すCa濃度が増加すると、骨密度が低下て、やがては骨の強度が低下する。すなわち、骨の構造は正常であるものの単位容積当たりの骨塩量が減少することによって骨粗鬆症は起こるわけである。

 ちなみに、20〜40歳健康成人の骨塩量を100%とすると、臨床的には骨塩量が70%以下となった場合を骨粗鬆症と診断されている。人それぞれの骨(塩)量を知るには、足のかかとの部分の骨量を測定するための超音波検査法や、X線検査により手の骨や腰骨、股関節、全身の骨密度(骨塩量)の測定を行えば判明する。

 骨粗鬆症になりやすい要因には、家族歴、年齢、閉経後の女性などのほか、Caの乏しい食事、日光浴不足、運動不足、喫煙など生活習慣による要因がある。
 
 一般に、Caは吸収率が悪く、最も吸収率の良い牛乳でさえ約50%と言われており、そのほか海産物で約30%、緑黄色野菜で約20%である。Caを多く含む食品には、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、わかめ、ししゃも、しらす、干しひじき、干しえび、丸干しイワシなどの海産物、納豆、小松菜、レタス、ブロッコリー、モロヘイヤ、ほうれん草、大根葉などの豆類・緑黄色野菜などがある。

 そして、日本人が健康な強い骨を維持するためには、1日600mgのCaが必要とされていることも忘れてはならないことである。
 また、無理をせず毎日続けられる運動、すなわち、エアロビクスや筋肉トレーニング(とくに背腰筋・腹筋)、ウォーキングなどが適していますので、日常生活の中で日光浴もしながら30〜60分間はなるべく体を動かして活動性を高めるように生活習慣の改善に心掛けて頂きたい。

 最後に、骨粗鬆症の治療薬は2つのタイプに大別されていますが、
(1)骨吸収を抑制する作用のある薬、
(2)骨形成を促進する作用のある薬でありますので、実際の使用に際しては専門医と良く相談して頂きたい。
 以上、“転ばぬ先の杖”と格言にもありますように、骨折してからでは大変です。骨粗鬆症の予防のためにも牛乳を飲むように心掛けることや、骨粗鬆症になりやすい要因のある方は、毎日200mgのCaを補うように努力いたしましょう。また、併せて運動することにより骨を刺激してCaの沈着をしやすくしましょう。

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