コラム
健康づくりを骨から始めましょう
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このコーナーは各界でご活躍の方々にお願いしております。
11月
その1 岡野 一年 老人病院における患者の骨と生きる歓び
その2 尾崎 公 歯の個性
その3 北澤 理子 美味しいカルシウムの迅速調理法
その4 鶴丸 泰男 精神科医の賞味期限
   
五十音順

その1 老人病院における患者の骨と生きる歓び 〜岡野 一年〜
著者近影おかの かずとし

医療法人優仁会 常務理事・統轄院長。
東京大学医学部医学科を卒業後、東京大学医学部老年病学教室に入局される。
聖マリアンア医科大学第三内科学助教授を経て現在に至る。
日本内分泌学会評議員、日本骨代謝学会評議員、日本骨粗鬆症学会評議員、日本老年医学会評議員、(財)骨粗鬆症財団治験審査委員会常任委員

 65歳以上の高齢者の約3分の1が骨粗鬆症にかかっており,65歳以上の女性の約半数が骨粗鬆症になっております。骨粗鬆症になると,手をついたり,ちょっとつんのめるなどしても骨折しやすくなります。高齢者の場合いったん骨折すると治りが遅く,骨折部位が大腿骨や脊椎骨ですと寝たきりの生活につながります。

 私は,平成9年4月より北海道滝川市を中心とする医療法人優仁会に勤務しております。医療法人優仁会は,滝川中央病院(300床の精神病院),若葉台病院(204床の療養型医療施設)および介護老人保健施設サンライズ留萌(100床)の2病院1施設より構成されております。
私が普段おります若葉台病院には114床の介護保険適用病棟と90床の医療保険適用病棟があります。介護保険適用病棟では入院患者の全員が寝たきりの状態にあります。医療保険適用病棟では,入院患者のうち寝たきりの患者は41.7%,車いすを自分で操作できる患者は7.4%,歩行可能な患者は20.9%であり,介護保険適用病棟にくらべて患者の病状は軽いです。

 寝たきりの原因としては,脳卒中が一番大きな割合を占めており,その次が高齢による衰弱で,3番目が骨折・転倒であります。寝たきりの状態では骨の粗鬆化が一層進み,四肢の関節の拘縮が起こります。 関節の拘縮の進行を少しでも緩和するために,四肢の関節可動域の維持・拡大を目的とした理学療法士による他動的な関節の運動も必要です。 寝たきりの患者に対して看護師の指導のもとでヘルパーが食事・排泄・入浴などの世話を24時間体制で行っております。 歩ける患者や車いすを自分で操作できる患者だけでなく,後方支持などにより座ることができる患者を対象として, いすに座ったままでのラジオ体操,風船送り,バトンリレーを平日毎日行っております。寝たきりの患者でもよほどの痴呆がないかぎり病院のリハレクに参加してもらうようにしており,病院内でのカラオケだけでなく,外部からのボランティアによる歌謡ショー,日本舞踊,YOSAKOIソーランなどに出席したあと感激して泣き出す患者もおります。

 患者への話しかけは,患者の生きようとする意欲と生きる歓びを維持するために私たちに課せられた大切な業務です。給食部では食事中のカルシウム含量には十分に気をつけており,骨を強くするビタミンKを多く含む納豆を週1〜2回出しております。骨粗鬆症患者に対しては骨粗鬆症治療薬を適宜処方しております。

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その2 歯の個性 〜尾崎 公〜
著者近影おざき ただし

1925年 和歌山県生まれ。
1953年 日本大学歯学部卒業し、1955〜60年 東京大学医学部解剖学教室へ留学される。1960年 医学博士。
1968年 日本大学歯学部教授となり、68年〜70年 南オーストラリア アデレイト大学客員研究員。
1971年 日本大学松戸歯学部教授となり、1995年より現在、日本大学名誉教授である。

 「歯の個性」という表題で話を進めようとすると、幾人かの学生は歯にも個性があるのかという質問をする。おそらくヒトの人間性なり精神面での個性と同じように考えてのことだろう。
そこで私は形態学的な歯の大きさ、形、構造あるいは萌出などを含めた個人的な変化の全体像の話であると注釈を加える。

 私どもの身体は生物学的な細胞、組織、器官の組み合わせ、すなわち各部分の総和で出来ていて、そのそれぞれに個性がある。 ただ個性を示す度合いには大小の差があって、例えば頭部全体を作る複雑な数多くの要素から見れば、歯は小さい要素であることは理解出来る。

 それでも、かつて私どもが歯種の鑑別診断の可能性について研究を行った際、収集した資料の中で典型的な歯の形を備えている場合はともかくも、大多数の歯がどの歯種に所属するかを適格に答えることは非常に難しいことであった。この事実は同じ歯種でも個体による変異の幅が大きくて、同じ形態のものはないということである。一方、実際に一個体の歯群の中に他体の歯が混入していたとすると、私どもには比較的容易にそれを識別することが出来る。
これらの事実は歯の個性のあることを意味する。

 少し具体的に述べると、歯種は永久歯群の場合、切歯・犬歯・小臼歯・大臼歯の4群に区別され、しかもそれらの萌出部位が定まっている。 即ち、歯列(歯並び)の前方の中心位の歯から上下顎とも左右に中切歯・側切歯・犬歯・第1小臼歯・第2小臼歯・第1大臼歯・第2大臼歯・第3大臼歯の8本が対称的に存在するが、歯の発生する環境は他の一般体制と異なって、上顎の歯は上顎骨の、下顎の歯は下顎骨の中で囲まれて発生するので、食性を如実に反映しながらも顎骨と共に調和して発育していくと考えるのが一般論的であろう。 そしてその際、歯の形が作られるときの因子の強いのは犬歯を除いて、切歯では中切歯、小臼歯では第1小臼歯、大臼歯では第1大臼歯である。そのためそれぞれその歯種の基本的な形態を保持していることから、これらを鍵歯と呼ぶ人もいる。したがって、基本歯の前後に並ぶその他の歯が人類進化の過程に基づいて少しずつ形が崩れたり、丸みを持っていたり、小さくなったりして時には欠如することもしばしばである。歯の大きさの相関関係をみると、同名歯間で高く、他名歯間で低いこともこの間の状況を知らせてくれる。

 つまり遺伝的な支配を強く受ける一個体の個々の歯が、独自の個性を示すと同時に歯列を作るという、いわば協調性のある個性をも示してきた結果が現在の姿であると私は考えている。

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その3 美味しいカルシウムの迅速調理法  〜北澤 理子〜
著者近影きたざわ りこ  

1985年 神戸大学医学部卒業され、1992年 同大学院修了。
1992〜94年 米国ワシントン大学内分泌科リサーチフェロー。
1995年 神戸大学医学部第2病理助手となり、97年より同大学同学部講師を勤められる。

 私の健康法は、なるべく材料から調理した食事を摂ることである。インスタント、レトルト食品や出来合の惣菜では、食品添加物だけでなく塩分や脂質の過剰摂取になりやすいからである。とはいえ仕事があるので、調理に長い時間を費やせない状況は今に至るまで変わらない。調理本を片手に凝った料理を作るよりも、いかに迅速で簡便に食膳を調えるかが我が家の課題である。
今日はカルシウム摂取に有効な迅速調理を述べてみたい。

1. 納豆の克服
 今では日本中の食卓に浸透しているが、昔は関西では納豆を食べる習慣がなかった。幼少期に東京の親戚に行くと、朝ご飯にねばねばと臭いものを食べていて、体によいと勧められたが丁重にお断りした。納豆を「食べられるようになった」理由はわからないが、大学生の頃には抵抗なく食べるようになった。その頃にふと思いつきで始めた納豆レシピがある。納豆と縮緬じゃこに練り芥子を混ぜて、そこに貝割れ菜を混ぜる。各々の分量は適当でよく、一分少々で完成である。因みに、縮緬じゃこは塩分があるので醤油は不要、芥子は納豆の臭みを消すが、貝割れ菜のほのかな辛味がさわやかで、これだけでいくらでも御飯が食べられる。貝割れ菜は手でちぎる、納豆のパック容器を使って混ぜれば、片付けも手間要らず。これと牛乳とで朝食にすれば、トーストを焼くよりも早かった。病院実習に忙しい医学生時代の朝食であったが、カルシウム含有量は縮緬納豆mg+ 牛乳mg=mg、となる。

2. 小松菜には3分とかからない
 小魚類はカルシウム含量は多いが、消化吸収にやや難があるらしい。小松菜は葉物の中では際立ってカルシウムが多い。小松菜などの葉物野菜の多量摂取には「お浸し」がお奨めで、味付けは、醤油に鰹節、芥子か胡麻というところか。ところで私は「お浸し」に鍋は使わない。流し台のシンクに金属のボウルをおいて野菜を入れ、薬缶で沸騰させたお湯を上から注ぎ、採箸で野菜全体を浸漬して1分以内には湯を捨てる。流水を注いでアクを取り冷やすことに1分。野菜の水分を絞り、大きく切ってボウルに回収して調味料を混ぜる。鍋を使うことなく3分で出来る。因みに、小松菜お浸し胡麻和えでは1人前カルシウムmg相当である。

 カルシウムが沢山取れる簡単メニューはないかと中高年者に聞かれたら、例えばこんな物はいかがでしょうと勧めている。

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その4 精神科医の賞味期限 〜鶴丸 泰男〜
著者近影つるまる やすお

大阪市立大学医学部卒業。精神科医。
東京都町田市にて原町田夜間診療所を開業され、元気会横浜病院(痴呆老人医療)に勤務しておられる。

 ある精神科医によると、精神科医の賞味期限は45歳ということである。となると、70歳に手がとどきそうな私などはすでに賞味期限切れとなっており、粗大ごみとして捨てられるだけだ。

 精神科に入局して数年がたった頃、私は、精神科を新設するために四国のT市民病院へ大学から派遣された。当時、結核患者が減少傾向にあり、T市民病院でも結核病棟の一部を精神科病棟へ転向しようということであった。 50床の新しい精神科病棟を与えられた私は、外来患者から入院患者まですべて一人で診療に当たらねばならなかった。

 「精神科医は病気だけを見ていては駄目、患者さんの人間全体を見なければならない。」つまり精神科での診療は、専門の知識だけでできるものではなく、こちらも人間全体として患者さんにぶつかっていかねばならない。 当時、私は30歳を過ぎたばかりであった。したがって患者さんの多くが私より年長者であり、ずっと人生経験が豊かであった。私は若すぎる青二才医長として常に緊張を強いられながら人生の先輩である患者さんの治療に当たっていた。

著者近影 クロルプロマジンに始まった精神病治療薬は、その後数多く開発され、かつては治らぬ病であった統合失調症もその予後を大きく変えることとなった。したがって精神科医療も、入院中心から外来重視へと大きく変わり、私も時代の流れに逆らわず、精神病院の勤務をやめ精神科クリニックを開業した。
  今年で早や20年になる。今や患者さんのほとんどが私より若く、私の方が人生経験では長くなってしまった。患者さんたちは白衣を着た親父に相談をしに来るつもりなのだろう。職場や家庭での悩みなど涙を流しながら、また時には怒りの気持ちを露にして訴える。患者さんからの相談や愚痴などを聞き、それに私は肩肘を張らずに応じる。知らないことは知らない、分からないことは分からないとあるがままに答えているが、患者さんたちは私と話すだけで、満足し安心して帰っていかれる。
私は普段着のままで診療に当たっていれば良いのだ。T市民病院時代に感じていたあの緊張感が今はすっかりなくなっている。

 精神科医は年齢を重ねれば重ねるほど、仕事はしやすくなるようである。精神科医の賞味期限は45歳ではなく、もう少し長いのではないか・・・そして歳をとることは満更でもないと思っている。

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