健康づくりを骨から始めましょう
       
         
  コラムバックナンバー      
         
  このコーナーは各界でご活躍の方々にお願いしております。
     
 

4月

その1 足立 卓三 私の仲間は定期券
その2 河村 洋二郎 体の健康、心の健康と口の健康 一口の大切さを認識・理解しよう一
その3 木口 雅史 職業病?
  その4 草深 公秀 軟骨ってなぁーに?
  その5 杉山 徹宗 歯の危機管理
  その6 田中 重雄 あなたもわたしも、また骨も、自然の薬である
(五十音順)
     
           
    その1 私の仲間は定期券  〜足立 卓三〜
     
   

「ついに来た、俺も週休七日制」という川柳を新聞で読んだ。
 国立36年、私立13年、49年間大学教育行政に携わり、サラリーマンとして管理されてきた生活から、全く自由に自己管理する生活となり、まさに、週休七日制となった。
 ここで、「今ぞ、発想の転換」....自分の性格から直ぐには転換できない。では、どうするか。まず永年の生活の延長線上で考えよう。考えついたのが49年間の通勤の形を続けること、つまり毎日家を出ることにした。
 さて、実行するには、目的・方法・記録が必要である。

目的 今まで出来なかった社会勉強と健康保持

方法 永年私の仲間「定期券」を購入する。
 普通運賃の半額ですむ。毎回交通費を出すことになれば、「今日はまあいいや…。」「おっくうで…。」となりかねないからだ。

記録 出掛けには必ず万歩計とデジタルカメラを持参。一日どの位歩いたか、どこでどんなことに出会ったか、目標は、一日一万歩、記録を残すことで自信がつく。(海外旅行のときも同じ)
 デジカメの記録も撮影場所を同一とした。春夏秋冬の変化、季節でこんなにも風景が異なるのもおもしろい。町並みも一歩横道に入ると昔の家並みが残っているなど、改めて興味が湧く。

 こうしたことで週休七日制の心と体の健康をどうやら保っている。
 私の仲間「定期券」の効用に感謝している毎日だ。
 いつまで続けられるか、それが問題だが、久米川先生から、是非何か書くようにとのことで、生活の一端をしたためました。

定期券
定期券:現在使用のもの

新宿御苑
新宿御苑:西洋庭園の冬と新緑のころ

     
         
   
著者近影

あだち たくぞう

国立大学36年私立大学13年、49年に渡り、教育行政に携わった者です。
東京をはじめ名古屋、神戸、山口、新潟、札幌と各地に勤務。中でも札幌勤務の時は、北海道内、札幌、旭川、函館、釧路、岩見沢、と教育校が分散しており、現在の様な通信機器も発達していない時でしたので、会議など諸連絡、行事などに大変な時間を要しました。しかし、お陰で北海道内の雄大な景色、実にすばらしい景観、いまでも忘れません。地理学を専攻しましたので、とくに感慨がひとしおでした。
趣味として現在、デジカメに夢中になっております。何処に出掛けるにも、デジカメと万歩計、定期券は必携品です。目下、デジカメ撮影は、四季の変化を捕らえるべく撮影の場所を同一場所に設定し、その変化をたのしんでおります。

     
       
 
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    その2 体の健康、心の健康と口の健康 一口の大切さを認識・理解しよう
河村 洋二郎
     
   

 

表1 口の機能

1
表情・容貌
2
そしゃく(食物捕捉、咬断、粉砕、臼磨)
3
噛みつき
4
.吸う・なめる・乳の吸収
5
5えんげ
6
.おう吐
7
.あくび
8
.つばきをは<
9
.食物中の危険物発見
10
物をくわえる(手の代用)
11
.呼吸の道
12
.会話・歌う
13
.くしゃみ・せき
14
.口笛・吹く
15
.歯ぎしり
16
.精神緊張による噛みしめ
17
.味わう
18
.キツス
19
食品の歯ごたえ
20
.唾液分泌

 

表2 咀嚼の意義・目的 

1
生理学的意義
a
食品の紛砕,臼磨
b
嚥下しやすく食塊を形成する
c
味覚を刺激する
d
唾液分泌の促進
e
口腔内の清浄作用
f
食品を消化吸収しやすくする
g
食品中の危険物の発見
h
口顎組織の血流促進
i
口顎構成の発育刺激
2
心理学的意義
a
咀嚼欲求の満足
b
精神統一,注意集中

 

 はじめに
ヒトや動物の生理的機能には生体リズム(バイオ・リズム)がある。この生体リズムと、そのヒトの生活リズムとの間に大きな違いや混乱のないことが健康維持には大切である。
 また、健康を保つためには十分な睡眠と休養、適度の運動、さらに適正に食生活すること(栄養摂取)が必要なことは広く知られている。この3条件の中で、栄養摂取には食べるものや、飲むものが必要である。この点が睡眠と休養および運動と大きく違っている。しかも、飲食の問題は、食べるもの飲むものの味や量、成分だけでなく、体調や食べる意欲(食欲)が大切である。従つて、食べる意欲をそこなわない食環境についても十分に考慮することが必要である。
1.口の働きについて
ヒトが健康に生きるため口は多くの大切な生理的役目をはたしている(表1)
しかも、腕や脚はその運勤も感覚も脊髄支配下にあるのに対して、口はその運動も感覚も三叉神経や顔面神経など脳神経の支配下にあって、脳と密接な関係にある。
 さらに、食べる一しゃべる、噛む一吸う、あくび一噛みしめ、吐き出し一飲み込み、と言った色々の動作の中には、その目的が全く逆なものもあるし、異質なものもけっして少なくない。これら動作の大部分は意識的に行なうことができるだけでなく、反射的に生じるものでもある。
 また新生児は手足はまだ十分に働かないし、目も十分には見えない。しかし、生きていくのに欠かすことの出来ない乳を吸う口の働きは新生児でも十分に発育している。
 口の動かせ方には個性があって個人識別に役立つだけでなく、口を見ればそのヒトの機嫌が容易にわかる。このように、口は人々相互のコミュニケーションにも、健康に社会生活をおぐるためにも極めて大切な働きをはたしている。
故に、歯だけでなく口唇、舌、頬、咽頭部など口のすべての部分の健康と調和した機能を常に考えて大切にしなければならない。
2.「かむ」ことにっいて
 日本語で「かむ」と言えば噛む(bite)咬む(c1enching),咀嚼(chewing、mastication)など色々の用語が頭に浮かぶ。これら以外にも噛みつく(snap),食物の捕捉(prehension),咬断(incision),粉砕(crushing),臼磨(grinding)などのかむ現象に気が付く。さらに、「かむ」ことに大変似た動作の歯ぎしり(bruxism),や咬痙(tetanus)などもあって、それぞれで口の働き方が異なっている。
さらに、動物種族によって口の形や歯の数や形も違っており「かむ」ことについての動物実験結果をそのまま、ヒトに適用することは慎重でなければならない。
3. 咀嚼について
 咀嚼(chewing,mastication)とは食べ物を口にいれてから口腔・咽頭部で行なわれるすべての生理的経過のことである。口の中に食べ物のない状況で下顎や舌を動かせている動作は咀嚼ではない。顎の自由運動(free movemnents of the mandible)と言う。ヒトにとって食物咀嚼は生理的に、また心理的に重要な意昧がある。(表2)
4. 味わうことについて
 口の感覚は食べ物をえらび、あるいは危険なものが体内に人らないよう防禦している。また、たべものの好き嫌いを決めるのにも関係しており、好ましい味の情報は食欲を増進させ生き甲斐を感じさせる。味刺激は唾液分泌を生じさせるだけでなく、胃液分泌を促進させるし、甘い味は膵臓からインシュリンを分泌させて糖の代謝にも関与している。  
5. しゃべることについて
 人々の相互理解のたためコミュニケーションが大切であり、そのため会話や表情が大きな役割をはたしている。これらも口の機能にたよっている。歌をうたうにも、会話にも顎の動きや、口唇、舌、頬などの巧妙な動きや、相互強調が必要なことは言うまでもない。
おわりに
 最後に、医療従事者は患者に口の機能の大切さを分かり易く説明すると共に、患者の状態をよく観察して現況を判断し、どのように治療するのがよいかを決断して処置を実施すると共に、その結果を検討して今後の診断に役立たせるべきである。
     
   

かわむら ようじろう

大正10年生まれ。大阪大学医学部卒。医学博士。米国UCLA大学医学部客員教授を経て、大阪大学歯学部長。退官後甲子園大学長。大阪大学名誉教授。勲2等瑞宝章受章、スエーデン王室よりノーザンスター勲章受章など数々の受章をうける。また、WHO口腔保健専門委員、厚生省歯科医師国家試験部会長など、日本の医学歯学界で活躍した。

     
       
 
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    その3 職業病?〜木口 雅史〜      
     私は,これまで20年余りの間,新しい測定原理や計測方法を考え出して,それまで測れなかった物の性質を調べるという研究をしてきた。そのせいか,根拠が定量的に示されない話は信じられないという変わり者になってしまった。
例えば賞味期限。おいしく食べられる期限ということのように思えるが,もとからまずい物はどのように決めるのだろう?気になるから調べてみた。JAS法によると,「容器包装の開かれていない製品が表示された保存方法に従って保存された場合に、その製品として期待されるすべての品質特性を十分に保持しうると認められる期限」だそうである。まずくても構わないらしい。期限の設定法についても定められているので,おそらく根拠となる様々なデータがあるに違いないが,未だお目にかかったことがない。だから賞味期限なんて当てにしていない。
世の中に氾濫する健康に関する情報についても然り。「赤ワインは心臓病予防に効果がある」などと聞いても,ブームに乗ってあげない。赤ワインの消費量が多いフランスでは心臓病の死亡率が少ないからだそうであるが,それって単に,先に肝臓病で死んじゃってるからじゃないの?なかなかひねくれ者なのだ。実はポリフェノールに関する研究が沢山あって,学会で認められた有力な根拠があるのかもしれない。でも,研究データなんて統計的結果だから,人によるばらつきが大きいに違いない。私自身にどれだけ効果があるのかは甚だ疑問である。
賞味期限や赤ワインブームに限らない。巷の情報の多くは,根拠や限界は示されず結論だけが分りやすいキーワードとなって一人歩きしている。そんな中,インターネットの普及により,調べる努力さえ惜しまなければ詳細で有益な情報にアクセスできるようになってきたのは喜ばしい。私?努力を惜しんで,スーパーの牛乳を奥から取り,晩酌に赤ワインを楽しむ日々を送っている。信じてないけれど…。
     
   
.著者イラスト
きぐち まさし

1959年生まれ。(株)日立製作所 基礎研究所勤務。理学博士。
専門分野は、時間分解分光,非線形光学,脳機能計測等のレーザ計測。

幼少より声楽を始め声楽家を志すも親の意向により、研究の道を歩む、とともに音楽の道今だ忘れられずセミプロの域を超えた活躍をしている。
料理は主に仏料理、及びワインにも造詣が深い。人生を研究と共に楽しんでいる。
     
         
   
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    その4 「軟骨ってなぁーに?」 〜草深公秀      
     よく、「軟骨」と言う言葉を聞かれる人も多いと思いますが、これは、骨とは似 て非なる組織です。
骨は、ヒトでは、全身の骨格を強固に維持している組織で、その 主成分はI型コラーゲンとリン酸カルシュウムから成ります。
一方、軟骨は、お腹の中で胎児が発育する際、骨になる予定の場所に鋳型として作られ、生まれる頃には、 軟骨は、一部を残して、骨に置き換わっていきます。そして、軟骨の主成分は、II型 コラーゲンとプロテオグリカンと言う物質から成っており、骨のそれとは全然別のも のです。
 関節や、背骨の椎間板、耳、鼻の一部、喉頭、気管などは、生後も、軟骨が 残ります。生まれてからの関節や椎間板では、軟骨はクッションの役割をしていま す。ですから、その軟骨が、年をとって、薄くなったり、あるいは一部が完全に無く なったりすると、直接、骨と骨同士が、関節で擦り合わされる為、つらい痛みを生じま す。これが、膝や大腿骨の関節に起こった場合を「変形性関節症」と言います。骨には、神経も血管もあるので、このような症状を起こします。
 一方、軟骨には、神経 や血管はありません。ですから、軟骨同士は、こすれても、痛くありませんし、また 出血することもありません。変形性関節症の場合には、神経が存在する骨が、関節に 露出する為、つらい痛みを伴います。最近は、再生医学が盛んですが、このような変 形性関節症の患者さんの治療として、わざと、関節軟骨の一部に穴を開け、骨髄を露 出させ、FGF-2と言う物質を注入しておきます。そうすると、FGF-2によって、骨髄の 中の細胞が活性化され、穴を開けた部分に集まり、すり減っていた軟骨を再生してく れます。この治療法はまだ、確立したわけではありませんが、将来は変形性関節症に 適応されるものと期待されています。
 話しはちょっと変わります。軟骨は、生まれてくる時には、ほとんどが骨に置き 換わりますが、耳や喉頭 、気管の軟骨は、大人になっても、軟骨のまま残ります。 これをまとめて「永久軟骨」と分類しますが、私たちの研究グループは、年をとる と、気管軟骨の一部分が骨に置き換わっていくとの発表をしました。何故、永久軟骨で ある気管軟骨が、老人では骨に置き換わるのかはまだ解明されていませんが、大体6 0歳代で、半数のヒトの気管軟骨において、多かれ少なかれ、骨ができます。これで 何か不都合があるかと言われると、「特に無い」としか答えようがないのですが、少 なくとも、老化現象は、永久軟骨にも起こっていると言えるでしょう。
 骨がヒトの体重を直接支えている支柱であるとするならば、軟骨は、その体重の 変化に対応するクッションであると言えます。ですから、皆さん、今後は、骨だけで はなく、軟骨の健康にも、目を向けてみましょう。
     
   
著者近影
 

くさふか きみひで

1988年東京医科歯科大学歯学部卒業、歯学研究科大学院(口腔病理学)、日本赤十字社医療センター病理部に病理医として採用、現在に至る。
専門は、唾液腺種痘の病理及び、骨、軟骨における血管新生と血管新生抑制の役割についての研究。
多数の英文論文を発表。
歯科医師でありながら、現在は、全身臓器の病理診断業務を病理医としてやっている。

若手口腔病理学者の一人。

 

     
         
   

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    その5 歯の危機管理       〜杉山 徹宗〜      
   

人体のあらゆる器官は、各種臓器を始め目や耳、鼻、手足、腰など、幼少時代から日常使ってはいても、これらの部位に疲労が貯まって故障が生じてくるのは、たいてい中年を過ぎてからの場合が多い。
 ところが「歯」の場合は、幼少期から毎日、朝晩出来れば昼間も食事後、歯磨きが必要という厄介な器官である。つまり人間の歯は、キチンとした歯磨きと歯石除去を行っていないと虫歯や歯槽膿漏という危険に襲われる。予防のみならず虫歯などに罹った場合には、広がらないように正しい管理が必要となる。さらに歯を丈夫に保つにはカルシウムの摂取も大切である。ところで私の専門分野は国家の危機管理(安全保障)であるが、今日、日本でも漸く国家や企業などで危機管理の重要性が叫ばれ始めた。だが考えて見れば、歯の場合にも生まれてからお迎えが来るまで、毎日、危機管理が必要なのである。
 私事で恐縮であるが、大学を卒業して渡米し、米国の大学で12年間ほど教鞭を取ったが、実は私は幼少期から現在に至るまで牛乳は一滴も飲めない人間であるから、日本にいた時は小魚を食べていたが、米国滞在中は小魚がなく、このため上下の奥歯を抜歯するハメとなった。そうなると、素人ながら歯の知識を求めたくなるもので、米国での院生時代に歯学部の講義に潜り込んで、歯の病気などの授業を吸収した。帰国後、縁があって」ドイツの医歯薬関係の出版杜である「クインテッセンス」杜から頼まれ、『歯科医の英会話に強くなる本』というのを上梓した。内容は日本の歯科診療所に、歯に関する色々なトラブルを持った外国人(英語圏)患者が訪れて治療を受けるというものである。歯科医,衛生士,技工士,受付などの医療スタッフが、最も使う医療用語を日英両語で示したものであるが、発売から20年以上経つ今でも売れているようである。

     
    著者近影

すぎやま かつみ

慶応義塾大学法学部卒業。米国州立ウィスコンシン大学修士課程修了。 (財)ディフェンスリサーチセンター研究委員、米国ヴァンダービルト大学客員研究員、州立大学講師を経て現職、他に青山学院大学、自衛隊幹部学校の非常勤講師。
専門は比較防衛学、外交史、法学博士。

     
         
   

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    その6 あなたもわたしも、また骨も、自然の薬である〜田中 重雄〜      
   

 「あなたもわたしも天然物であり薬である。また薬屋さんである。」は、薬学部で教鞭をとっていた時代のセリフである。案外自分自身が薬であることを知らない人が多い。
 唾液は腫れ物を治すとか解毒作用があるとされ、事実チフス菌や赤痢菌などに対する抗菌作用があると報告されている。
唾液だけでなく涙や尿の中にも、市販の目薬などに含まれ細菌細胞壁の成分を分解する抗菌性成分リゾチームが見出されている。
子供の頃、思いっ切り転んで、たまらずわっと泣き出したときに、親の唾で膝小僧の擦り傷の痛みが軽減した経験をもつ人は多い。忘れてならないのは、その折あふれ出る涙もまた、リゾチーム入りの薬なのである。その傷が深ければ深いほど、私たちの身体はポタポタ流れ落ちる薬としての涙を多く生産するスグレモノである。
尿も天然尿素配合の肌を潤す薬として、また食塩含有の下剤として用いられ、一時期は血栓溶解剤のウロキナーゼの原料であった。
このように、生体の生理活性物質そのものやその情報を活用して生まれた新薬は多く、あなたもわたしも貴重な薬物の宝庫である。
 他に列記すると、髪の毛の黒焼きは止血薬として有名であるし、毎日剃る髭は腫れ物を治すのに、また現代人には不潔といやがられる頭のふけは慢性疲労、虫の毒、尿閉に、耳垢は虫刺され、腫れ物、破傷風、子供の夜泣きに、爪の垢を含むと思われる爪は、分娩促進、利尿に用いられている。一方、元気の元である乳汁は滋養、強壮に、血は虚弱症、出血性の病に、胞衣は血を補い、強壮(精)、安心、解毒に活用され、精液、経血、大小の排泄物も薬用資源とされている。古人の叡知の賜と考えられる人中白(尿壺中の壁や底に沈着したもの、ホルモンを含む)には鼻血などの諸出血、脚気、水腫などへの効用が記されている。私事になるが若いときに七転八倒の苦しみのなかで産出した尿路の結石は、まさに自分自身の身体が創出した、この世で唯一つの宝石と呼べる貴重な石であった。皮肉にもこの石は腎臓結石や尿路結石に効くと本草書に記載されているが、その後病とは縁が切れ、残念ながら試効する機会はない。
 最後に、骨の健康づくりに関連することを一言。骨は骨の病や骨折に、頭蓋骨は虚弱体質に、また歯は腫れ物や耳垂れ、化膿性病変、疳の虫に、さらに歯垢は、刺し傷や蛇・蜂の毒に対する薬効がうたわれ、猿、兎、鼠、狗、狼、狸、狐、虎、豹、猫、猯、水獺、熊、猪、鹿、牛、羊、馬、驢馬、象、龍、カワウ、コウノトリ、ガチョウ、ガン、タカ、ワシ、トビ、ニワトリ、ツル、スズメ、ヘビ、ハブ、マムシ、コイ、セイギョ、フナ、ウナギの骨や歯も薬であると古人は記している。
 自然の巧妙さや先人の叡知に触れるとき、思い出されるのはソクラテスの「汝自身を知れ」との至言であり、あなたもわたしも、また骨も、自然の薬である。

     
   
1_著者近影
 

たなか しげを

京都に生まれ、京都大学薬学部卒業後、同薬学研究科助教授を経て、 現職(東京農業大学バイオサイエンス学科教授)につく。植物の感覚と生き方を学びながら、バイオサイエンスを楽しんでいる。

植物の環境認識システム(水分,栄養分,接触,温度,pH等のスーパーセンサー)や適応能力の分子機構を解明し,その潜在能力を最大限に活用して,人間の世話を必要としない「農業をする作物」の作出を目指す。

 

著者近影 愛犬と      
       
     
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